Q 1 売掛金の請求書を送り続けている限り、時効の心配はありませんか?

Q 取引先が売掛金をなかなか支払ってくれない。請求書を時々送っているのですが、時効が心配なのですが、請求書を送っているので、時効にかかることはないと考えていいですか?。

 売掛金は、短期消滅時効といって、民法173条により、2年の経過により時効消滅する可能性があります。そこで、これを阻止するためには、時効中断という手続が必要です。請求書の送付というのは、催告という事由に当たりますが、これは催告した後6ヶ月以内に調停や訴訟など法的手続をとらないと時効中断の効力がなくなってしまいます。 ですから、時効が完成する2年以内に、請求書を出し、更に6ヶ月以内に調停や訴訟を起こさなくてはなりません。請求書の送付という方法では、なかなか時効中断は難しいと考えておいた方がいいでしょう。

(中村光央)

Q 2 内容証明郵便って、どうやって出すんですか?

 内容証明郵便というのは、郵便事業会社が文面に書かれた内容の文書を送ったことを証明してくれるものです。ですから、相手に送る文書は、同じものを3通作り、1通を相手に送り、1通を自分が所持し、1通を郵便事業会社が保管するというやり方になりますので、3通の書面(ただし、これは同じ内容でなければなりませんので、1通の文書を作りコピーして3部に増やし、それぞれに押印をすることをおすすめします。)を郵便局に持って行かなければなりません。内容証明郵便の取り扱いは特定郵便局では扱っていませんので、本局に行く必要があります。

(中村光央)

Q 3 会社の倒産というのはどのような場合をいうのですか?

 これはいちがいにいうのは難しい問題です。
  一般的には、会社が支払い不能の状態となり、営業の継続が出来なくなった状態をいいますが、よく言われるのは、手形不渡り事故を起こした場合などに「事実上倒産」という風に使われているようですが、正しいとはいいかねます。何故ならば、手形不渡りを2回出して銀行取引停止になったとしても、事業を続けることが出来ないとはいえません。現に、そのような方もおります。ですから、破産・特別清算などの申立をしたという場合は、明確に倒産したといえますが、それ以外には、その会社の実情が、事業の継続が可能かどうかによって判断が分かれると思います。 。

(中村光央)

Q 4 相続紛争を避けるためには?

 「自分の築き上げたものをどのように次の世代に託していくべきか」、人生の実りの時期を迎えた方であれば、誰しも一度は考えたことのあるテーマではないかと思われます。次世代に事業を承継させる、家族に財産を贈与する、生命保険の受取人を書き換える、遺言書を書く、様々な方法がありますし、実践される方も多くおられます。そして、行動を起こす方の多くが「自分がいなくなった後、相続争いだけは絶対に起こしてほしくない」という切実な願いを持っておられるものです。
 しかし、そのような願いを胸に抱いてこの世を去られた方に限って、いわゆる相続争いが起こってしまうケースが多々あります。例えば、いわゆる生前贈与をした財産は特別受益として遺産分割時に精算されてしまいますし、相続人が受け取った生命保険金は原則として遺産分割において考慮されません。たとえ公正証書で遺言書を作っておいても、一部の相続人から遺留分減殺請求をされて大きな紛争となることもよく見受けられます。非常に残念なことですが、人生において成功を収め、一家言ある方が、「これでよし!」と自ら行った相続対策ほど、後々紛争の火種になってしまうケースが多いといわざるを得ません。そればかりでなく、相続争いが長引き、あるいは税務上の不備から、次世代に託した事業や財産が価値を大きく減じてしまう、まさしく、国破れて山河ありといったケースすら散見されます。
 自ら築き上げた財産を次の世代に円満に承継させるためには、財産を築き上げるときと同じくらいの慎重さが必要です。そこで、これまでの人生で様々な専門家から助言を得たように、今のうちに専門家の力を借りて次の世代の青写真を描いてみてはいかがでしょうか。専門家による的確なアドバイスによって法律的、税務的に水も漏らさぬ対策が可能となることはもちろんですが、次の世代の青写真を描く上で、一家の支柱として最も強い求心力をもっているご自身が健在であり、強いリーダーシップを発揮できるということは、最も心強いことなのですから。

(杉山伸也)

Q 5 会社のヨコ判と代表者は全くの別物?

 世間で広く使われている会社のヨコ判、大抵の会社では「○×株式会社」という社名の下に「代表取締役○山×夫」と代表者個人の氏名が書かれています。
 さて、売買契約書や借用書などお金の支払いを約束する文書に代表者の個人名が入ったヨコ判が押されていると、「もし相手の会社が支払いをしなかった場合には代表者個人にお金を請求できるのだ」と間違えて考えている方がおられます。確かに、会社が銀行融資などを受ける際には代表者が個人で連帯保証するのが常識ですし、小さな会社では法人としての会社というよりは代表者個人と取引をする感覚の方が強かろうと思われます。
 しかし、どんな小さな会社であろうとも、個人と法人は全くの別物です。そして、冒頭のヨコ判は、代表者の個人名が入っていようとも、あくまでも会社のヨコ判であり、代表者個人を表示するものではありません。したがって、例えば会社のヨコ判と会社印だけが押された借用書を作った場合には、会社にしかお金を請求することができません。たとえ、会社に全くお金が残っていないのに、代表者個人は豪邸に住んでいるような場合でも同じです。「代表者個人が払ってくれるから大丈夫」と勘違いしていると、お金を回収できない結果に終わってしまいます。「法人格否認の法理」といいまして、理論上は、このようなときに代表者個人に請求する理論もありますが、実務上この理論が認められたという話はほとんど聞きません。
 そこで、売買契約書や借用書など、お金の支払いに関する文書を作る場合、ヨコ判に会社印と併せて、連帯保証人の名目で代表者個人の署名と押印も別途求めておいたほうがいい場合も多々あります。特に会社からの支払いに不安があるような場合には、その方が安全でしょう。もちろん、相手との個人的な信頼関係や人間関係もありますが、売掛金や貸したお金を確実に返してもらうためにも代表者の個人保証を求めるべきか常に気に留めておくべきでしょう。

(杉山伸也)

Q 6 収入印紙が貼ってない契約書は無効?

 領収書や契約書に収入印紙を貼る、というのは事業をされている方にとっては常識かと思われます。では、どのような場合に収入印紙を貼らなくてはならないか、逆にどのような場合は収入印紙を張らなくもよいのかまで理解されていますか?
 収入印紙を貼らなくてはならない場合やその額は印紙税法という法律で細かく規定されており、領収書や契約書だから必ず印紙を貼らなくてはならないというものではありません。例えば相殺勘定で精算した取引について領収書を発行する場合は、額にかかわらず印紙の貼り付けは必要ありません。塵も積もれば山となるというわけではありませんが、印紙代も削減可能なコストである場合もありえます。疑問に思った時には税理士の先生にご相談されては如何でしょうか。
 さて、弁護士の領域との関係でよくいただくのが、「収入印紙を貼っていない契約書、領収書は無効ではないのか?」というご質問です。
 結論から言えば、収入印紙が貼っていないという理由で契約書、領収書が無効になるということはまったくありません。書面に記載されている内容にて有効です。印紙の貼付義務は印紙税法によって課せられた義務であり、契約の有効無効を決する民法や商法などとは次元が異なるものです。ですので、印紙の有無と契約の有効無効は全く関係のない問題です。
 もっとも、法律上定められた印紙を貼り付けていないと、後に本来の印紙税額とその2倍に相当する金額が過怠税として課されてしまいます。例えば200円の印紙を貼り忘れた場合は、本来貼るべき200円とその2倍の400円、合計600円を支払わなくてはならないことになりますので、十分注意しましょう。
 たかが印紙、されど印紙、些細なことですが、そういう些細なものにこそ、削減可能な部分はないか、法律上の義務を果たしているか、今一度確認するのも大切かと思われます。

(杉山伸也)